海南市の人口推移から見えてきた、この町の変化のかたち

紀の川市に住んでいると、海南市はすぐ近くにあるのに、どこか性格の違う町に見える。
国道42号を南に下っていけばすぐ。阪和自動車道の海南東ICもある。便利。
でも、黒江のあの細い路地に入ったとたん、時間の流れが変わる。あの感じ、私はずっと気になっていた。

今回のテーマはひとつ。
海南市の人口推移を見て、この町がどう変わってきたのかを考えてみたい。
そして、和歌山県内の周辺市町村との比較。
さらに、人口規模が近い石川県七尾市と山梨県富士吉田市を引き合いに出して、海南市の立ち位置を探っていく。

答えを急がず、じっくり仮説で進めていきたい。


人口減少のペースに注目してみた

減ってはいるけど、落ち方にクセがある町

まずは人口の流れをざっくり整理してみた。
2000年に約6万人いた海南市の人口は、2015年には約5.2万人、2020年には約4.8万人と、20年でおよそ2割減っている。
この下がり方は、けっこうはっきりしている。

でも私が気になるのは、数の減少そのものより、その「減り方の質」。

海南市は和歌山市に隣接していて、いわゆる車社会。
国道42号を軸にした動線が太く、和歌山都市圏との距離も近い。
そんな条件の町は、「人がいなくなる」ではなく「暮らし方の配置が変わる」ことで人口が減っていくことが多い気がする。

ちなみに住民基本台帳で見ると、近年は4.6万人台の数字が多く見られる。
国勢調査より少なく出やすいけど、どちらでも減少傾向ははっきり。

じゃあ、この減少はどういう町の変化を表しているのか。
周辺の町と比べてみると、海南の位置づけがもう少し見えてくる。


周辺の市町村と比べて見えること

海南市は大都市の端でバランスを取る町

海南市のまわりをぐるっと見渡すと、和歌山市・岩出市・紀の川市・紀美野町、少し離れて有田市あたりも生活圏が重なる存在。

和歌山市は大きな市だけど、実はここもじわじわと人口が減っている。
つまり、海南市が減っているのは特別なことではない。ちょっと安心していい。

岩出市は、和歌山市へのアクセスがいいこともあって、比較的粘り強い人口維持をしている時期もある。▶岩出市のページ
紀の川市は海南市よりやや大きな規模だけど、やはり減少傾向。▶紀の川市の人口解説
そして紀美野町は山の町。人口は急激に減りやすく、数字の落ち込みもきつい。▶紀美野町の人口について

こうして並べてみると、海南市は中間的なポジションに見えてくる。
岩出市ほどベッドタウンにはなりきらず、紀美野町ほど過疎化が進んでもいない。

和歌山市の隣という強烈な磁場に引き寄せられながらも、自分の中に「用事」を持っている町。
その用事の代表が、海南駅周辺・海南nobinos・海南医療センターなどの拠点。
買い物ならスーパーセンターオークワやエバグリーンといった大型店が生活を支える。

人口が減っても、生活の濃度が保たれている。
町全体が均一に薄くなるのではなく、濃いエリアと薄いエリアがはっきりしてくるような構造。
この「点で支える感じ」が、海南市の特徴かもしれない。

そして、黒江という地区の存在も大きい。
町並みそのものが目的地になっていて、黒江ぬりもの館や紀州漆器の文化的な拠点が残る。
琴ノ浦温山荘園のように、訪れるだけで満足できる場所もある。

人口が減っていく町にとって、「外から人が来る理由」があることは、じつはとても大きい。
海南市は、すでにその土台を持っている町だと思う。

ただ、周辺だけ見ていても、この町の特性は少しぼやける。
そこで次に、人口規模が近い全国の町と比べてみることにした。


同じくらいの人口規模の町と比べてみた

七尾市・富士吉田市と並べたときの海南市の立ち位置

2020年の海南市の人口は約4.8万人。
ほぼ同じ規模の市に、石川県七尾市(約5.0万人)と、山梨県富士吉田市(約4.7万人)がある。▶市町村人口ランキング

この3市を比較すると、似ているようでまったく違う構造が見えてくる。

七尾市は、能登半島の中核都市。
広い地域を支える役割があり、その分、まわりが薄くなると真ん中も一緒に弱くなりやすい。▶七尾市の個人ブログ記事
なので、人口の減り方も海南よりやや急に見える。

一方の富士吉田市は、富士山のふもとにある観光都市。
観光客や日帰りの人が常に通っていて、住民人口とは別の動きが町にある。
人口が減っても、町としてのエネルギーが沈まないケースがある。▶富士吉田市の人口についての記事

では海南市はどちらに近いのか。
私はその「中間」だと思う。

全国からの観光客が一気に集まるほどではないけど、観光の要素はある。
広域圏を背負うような立場ではないけれど、周辺に吸い寄せられすぎず、自分の生活圏をなんとか持っている。

つまり、海南市の人口の減り方は、「町そのものの縮小」ではなく、和歌山市という巨大都市との関係性の中で揺れながら起きている。
ここに、この町の個性があるように思う。


今のところの仮説

海南市の変化は「縮小」ではなく「再配置」

いまのところ、私の仮説はこう。

海南市は、人口が減っているけれど、それは町がただ小さくなっているわけではない。
むしろ、生活の拠点が再構築されていて、「点」で支える形に移行している。

周辺と比べれば、和歌山市の影響を受けながらも、自立した用事がある。
七尾市や富士吉田市と比べても、観光一辺倒でもなく、広域中心でもない、独自の暮らしと距離感を作っている町。

それに加えて、道路の整備が町のあり方をゆっくり変えていっている。

国道42号・370号の改良、有田海南道路の開通。
これらが少しずつ、生活圏の輪郭を動かしている。
海南東ICを軸に、通過だけでなく、立ち寄りの町になる可能性もある。

たとえば、道の駅 海南サクアス。
新しくできたこの施設が、町に滞在する理由をつくるなら、単なる通過地点から一歩進めるかもしれない。

人口を増やすのは簡単じゃない。
だけど、減っていく中でも町の機能をどう残すか。その答えに、海南市は向かっている気がしている。


最後に確かめたいこと

数字のあとに見えるのは、現場の手ざわり

人口統計はあくまで結果。
本当の変化は、町の現場に落ちている。

海南nobinosには、今どんな人たちが集まっているのか。
黒江の空き家は、再活用されているのか、それとも静かに閉じているのか。
道の駅 海南サクアスでは、誰が何を買って、どこへ帰っていくのか。

数字に出ない動きが、町の未来を左右する。

私はまだ途中だ。
でも、だからこそ、海南市の変わり方をこれからも見つめていきたい。

この町は、ただ減っているだけでは終わらないと、私は思っている。


 

地区別年齢別人口 海南市